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映画「氷菓」 感想

わたし、気になります! 

 

hyouka-movie.jp

 

観に行ってきました。

映画嫌いで1年に1作観るかどうかという私ですが、今年は3作もみてしまいましたねえ。「夜は短し~」「ダンケルク」に続いてこれが3作目です。たぶん今年はこれが最後でしょう。

 

もともと米澤穂信ファンで、古典部シリーズはアニメ化前から読んでいましたし、アニメの方もしっかり楽しんだ人間です。そりゃ映画だけ観ないわけにはいきませんよね。

 

折木奉太郎役は山﨑賢人、千反田える役は広瀬アリス伊原摩耶花役は小島藤子福部里志役が岡山天音。豪華キャストですね。山﨑賢人は特にけだるげな雰囲気があってます。小島藤子もかわいい。

 

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全体的な感想(※未視聴向け)

アニメとは違った路線で、しかし原作にかなりリスペクトを持ちつつ、そして映画に合うように細かい部分をうまく改変した映画だと感じました。特にクライマックスのシーンは良い改変演出。過去を探っていくという性質上、原作では瞬間的な盛り上がりは大きくないわけですが、映画では関谷純の人物像をしっかり描いた上で関谷の想いを力強く表現していて、明かされていく真相とともにだんだんざわついてきた心をぐっと盛り上げてちゃんと良い場所に収めてくれるようになっていますね。

細かいところでは紙がすれる音の演出が気持ちよい。文集、姉からの手紙、本、文献と紙をめくるシーンが多いわけですが、紙をめくるときにこすれる音を大きめに出せるのが映画館の良いところですよね。ページがめくられるたびに新たなヒントや考えが出たりして話が進んでいく、その合図として紙のこすれる音があってわくわくします。

 

気になった点はむしろアニメと統一した演出の部分で、実写ではわざとらしさが少し感じられた気がします。

あとは、原作を知らないとこの演出の意味わからないのではという箇所も少しだけあったかと思います。

 

全体的には結構丁寧につくられた映画という印象です。細部までしっかり楽しみたいなら原作を読んでから(あるいはアニメをみてから)が良いと思います。

 

 

 

細かい感想 というかレポート(一部ネタバレ)

映画館にいってみると女性客が多かったですね。雰囲気からいって古典部シリーズファンというよりは山﨑賢人ファンでしょうか。あとはお爺さんもいました。意外とアニメファンぽい雰囲気の人は少なかったですね。時間帯の問題でしょうか。

まあ他の客をじろじろ観るのも趣味が悪いのでおとなしく席に。スマホの電源を切ってはじまりはじまり。

 

最初のシーンは部活勧誘行列のシーンから。アニメと一緒ですね。でまあ「高校生活といえば薔薇色、薔薇色といえば高校生活……」と奉太郎のモノローグがはさまっていくのもアニメと同じ。でも実写映像でみてみるとなんか凄い違和感。なんか高校生らしくないんですよね。こんな老成した高校1年生がいてたまるかという感じ。小説やアニメではああいう話し方をしていても自然だしむしろキャラが立つので良いんでしょうけど、実写で学ラン着た高校生がこんな達観した台詞をあんなベテラン探偵みたいな口調で言われるとムム……まあ原作の時点で高校生っぽくないから良いのか。いや良くない。

まあでもアニメよりは、なんというか高校生っぽいぼそぼそしたしゃべり方で、そこは良いポイントだと思います。

 

続いて里志が登場。個人的には彼が一番しっくりきましたね。こんな感じの軽薄なしゃべり方ならいかにも高校生って感じがします。アニメの里志は序盤でちょっとオーバーに芝居がかった感じがあった気もしますが、こちらではそれがちょうど良い。背がやや低いのも原作通り。巾着もちゃんと持ってます(色がイメージとちがったけど)。

 

そしていよいよ千反田さんの登場シーン。背が高くて目が大きくて、イメージはまさにぴったり。でも話し方はやっぱり違和感!いくらお嬢様でも高校生がこんな話し方しませんって!奉太郎と同じで、キャラの立つ話し方だと実写でしっくりこないんですねえ。

ちょっとアニメのキャラクターを意識しすぎたでしょうか。もっとただのドラマと思ってしゃべる方が良い気がしました。

 

そして最初の謎へ。

推理演出は悪くないですね。再現された状況を幽霊視点で見るというのはアニメでもやっていましたし、まあいろんなとこでよくある演出方法ですよねたぶん。実際これが一番視覚的にわかりやすい。

個人的に気になったのは上履きの色合い。入学1週間だと上履きってもっとピカピカじゃないかと思うんですよね。さすがに見方が意地悪でしょうか。

 

続いては2つめの謎。そして伊原摩耶花の登場。

伊原はアニメにかなり寄せていますね。髪型もそうですし、声も似ています。かわいい。

あと個人的に沢木口先輩をみたくて目をこらしていたんですが、どれが沢木口先輩だったのかわからず。あのお団子髪型がそうだったのかな?

 

次はパイナップルサンド(バグパイプ)での奉太郎とえるの会話。

アニメと同じ喫茶店です。奉太郎の私服はザ・普通。これぞ奉太郎。対してえるの私服はずいぶんおしゃれです。見間違いでなければ小さいネックレスまでしていましたよね?2001年に岐阜の高校1年生ってそこまでする?まあわからん。お嬢様ならするのかも。

 

封印された文集を探すシーン(私の記憶が正しければ)。

えると摩耶花、女子2人の会話がかわいい。ここらへんからえる役の広瀬アリスの演技からアニメっぽさが抜けてきて自然な女子のしゃべり方になってきた気がします。

摩耶花が描いたえるの似顔絵がまんまアニメビジュアルだったのがクスッとしたポイント。

それから机につっぷした摩耶花が奉太郎にふっとばされるシーンも面白かった。

 

いくつかシーンをすっ飛ばして、千反田邸での推理会について。

里志の私服はいかにも高校生っぽくていいですね。雰囲気ある千反田邸にもこの軽装であっさり乗り込んでいくのが里志らしい感じ。

この推理会ではいろいろな小道具が出てきますね。「氷菓」「団結と祝砲」「神山高校50年の歩み」「壁新聞」など。どれも結構手が込んでいて時代感が出ていた気がします。特に「団結と祝砲」のあの読みづらい書き方なんかは雰囲気を感じました。まあ私は当時に生きていないので本当に当時っぽいのかは知りませんが。

各メンバーの推理シーンの演出も工夫がありました。えるの推理は普通。伊原の推理シーンは漫画テイストで漫研らしい感じ。里志の番では学生運動当時の映像を使っていました。これはデータベースを自称する里志らしくまさに記録、すなわちデータをそのままみせる演出ですね。そして奉太郎は幽霊視点。各メンバーの「らしさ」が出た推理演出だったと思います。

 

そして最後の推理にかけて。

何回も描かれた幽霊視点での映像が推理とともに更新されていく表現が良い感じです。少し映像がかわるだけで現れる真実の意味合いはどんどん違ったものになっていくのが凄いところ。

それから奉太郎の視点と関谷純の視点を重ねるのも面白いですね。

 

核心のアイスクリームのシーン、関谷純が叫ぶ演出は良い工夫でした。原作やアニメだと人によっては「え、そんなしょうもないだじゃれ?」って感じる人もいたでしょうが、この映画では関谷純の叫びだしたいような切実な思いをわかりやすく表現してくれました。

それから「生きたまま死ぬ」と失踪との対比もわかりやすくなっていました。最後の最後にベナレスをそれに絡ませたのも良改変。

 

最後。山積みにされた氷菓。文化祭が始まりそうなシーンでした。もしかしてクドリャフカの順番に続くんでしょうか?ちょっと期待しちゃいますね。文化祭編こそ映画に合うでしょうし観てみたいところです。

 

 

 

今回もだらだら描いているうちに長くなりました。めちゃくちゃ素晴らしい!とまでは言いませんがほんと丁寧につくられていて満足の内容でした。

 

そんな感じ。