何者にもならない小市民

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小説版『HELLO WORLD』感想

今日から三ヶ月後、お前は一行瑠璃と恋人同士になる。 

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HELLO WORLD (集英社文庫)

HELLO WORLD (集英社文庫)

 

 

 アニメ映画づくし!ということで今度はこちらの感想。といっても小説版だけ読んで映画は観てないのですが。

 

作者の野﨑まどといえば『死なない生徒殺人事件』『[映]アムリタ』などで有名ですね。ミステリとSFと、ちょっとホラーと混ぜ合わせてパセリを加えたような独特の世界観をもつ作家。私は『死なない生徒殺人事件』が好きです。

一部界隈では「将棋のタイトル戦で初手に家から持ってきた角で王手する話」が有名かもしれません。

 

で、まあ感想を一言でいうと、物足りなかったです。

たしかに表現は緻密で、映画を観てない私でも読むだけで映像が浮かんできます。それは素晴らしい。

 

でも、小説に求めるのはそれ以上のものです。

 

映画では尺の都合上絶対に説明できないものがあります。

例えば「神の手」はどういうシステムなのか、どう発明され、どう流通し、なぜ彼がこれを持てるに至ったのか。使い方の練習とは具体的になんなのか。どういう仕組みで使うのが上手くなるのか。

世界をリセットする存在はなぜ狐面なのか。なぜ物理的攻撃が効くのか。

映画でそれをいちいち説明されても流れが悪くなるので要りませんけど、ゆっくり読める小説ではそういう細かい所にしっかり理屈をつけて世界観により現実味を持たせる工夫が必要です。とくにこの話はSFとして扱われるように読者を誘導しているのですから、理屈っぽい説明があってしかるべきでした。

 

この小説は映画の内容を美しく文章にしていましたが、私が期待していた水準にはやや達しませんでした。

 

ま、そんな感じです。

とても短い感想ですが、以上!