何者にもならない小市民

読んだ本とか漫画の感想やメモ

『何者』感想、私の就活も勝手に語る

就活の面接ではまずキーワードから。ほんの少しの言葉と小さな小さな写真のみで自分が何者であるかを語るとき、どんな言葉を取捨選択するべきなのだろうか。

何者 (新潮文庫)

何者 (新潮文庫)

 

 

 

 就活が忙しくてブログをお休みしていましたが、無事内々定を頂いたので再開します。

 

再スタートの1発目はこれを読もうと決めていました。

就活していましたし、何より

「何者にもならない小市民」という痛い名前でブログをやっているからには「何者」かにならんとする話を読まねばなりません。

 

 

あらすじ

ついに就活シーズン。

観察眼と分析力に優れる二宮拓人、お調子者の友人光太郎、実直で大手志望の瑞月、意識高い系で留学経験のある理香、理香の彼氏で無個性な就活を嫌悪する隆良。5人は理香と隆良の同棲部屋を就活対策本部として互いに情報交換をしながら内定を目指していく。

……といえば聞こえはいいが、嫉妬、軽蔑、焦燥がそれぞれの胸に渦巻く。

裏垢で他人を蔑み、先に内々定をとった友人の企業の評判を2ちゃんで調べ……というお話。

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感想

就活中に読まなくてよかったー!

無い内定の状態でこれ読んでたらメンタル壊れて立ち直れないですよ。絶対読まない方がいいです。

私のように就活を終わらせて心の余裕を持った状態で上から目線で読むのが一番毒にならないと思います。薬にもならないけど。

薬にしたかったら大学2年までに読んだ方がいいかもしれません。

 

 

就活をしてみて実感したことですが、本当に心が摩耗していきます。

何が自分に足りないのかわからないまま「あなたは要りません」と何度も言われるんですからそりゃそうですね。

加えて心の中で(こんな人間よりは自分の方がマシでしょ!)って見下していた知り合いが先に内々定をもらっていたりするともう自分の価値観が否定されたようなショックです。

内々定を得た友人に「おめでとう」なんて笑って言えない、そんな自分の醜さがますます自分を惨めにする……

そんな感じてどんどん心が死んでいきます。

 

『何者』はそんな心の摩耗と嫉妬と自分の醜さをリアルに共感させられる作品です。

 

私自身は「留学」「ボランティア」「人脈」「広告研究会」をめちゃくちゃ馬鹿にして見下してるタイプの人間なので拓人にかなり感情移入して読んでました。

そしたら、最後ね……

薄々自覚はしていたことですが、そうやって他人を馬鹿にして何もしない自分が一番愚か者なんですよね。

わかってますけど、なかなか自分は変えられない。

 本当は変えようとも思ってない。

そんなことを突きつけられました。

 (なんかこれ以前も同じようなこと書いた気がする)

 

 

ここからは『何者』で登場人物たちが持っている「カード」や就活のやり方に関して私の個人的な感想と思い出。

まあ大手のIT系とメーカーしか受けたことないので本当に個人的で狭い観測範囲に基づく自分語りです。

しかも私は理系なので作中の登場人物達とは苦労のレベルがたぶん違います。

理系は楽。

 

名刺

必要性を感じない。

私の知りあいで1人、名刺を作った人がいたけど活用している感じではなかった。

大企業受けるなら人脈とか関係ないからね。

 

留学経験

あるとちょっと良いかも。

メーカーだといざとなれば海外にも行ける人が欲しかったりするので、そういうとき英語にアレルギーの無いことを示す手札になる。それ以上のアドバンテージにはならなさそう。

だから「洋書をたまに読みます」とか「TOEIC○○点あります」とか、理系なら「普段から論文を英語で読んでます」って言えるなら留学経験は要らないかも?

 

とかいいつつ私は大学2年でこっそり超短期留学した。イギリスに2週間、箔をつけるためだけに。

「留学」を見下してるとかいいつつこんなことしてるのは本当にダサいと思うけど、きれいごとは言っちゃおれん。 

 香港からイギリスに来た学生と知りあいになって「中国はどんな感じ?」って言ったら「香港は中国じゃ無い!」ってキレられた。

でも中国人留学生と話したときに「中国と台湾と香港は……」って言ったら「香港も台湾も中国なんだけど?」ってキレられた。

もう知らん。

 

証明写真

ちゃんとスタジオで撮った。

ウェブ上でESを出すこのご時世、スタジオなら写真をCDに焼いてデータでくれるので便利。

応募する業界によって髪型や雰囲気を変えて何種類も撮る人もいると噂に聞くけど、私はやっていない。というか髪が短いので変えようが無い。

 

自己分析

やり方がわからない。そんなんだからES落ちまくったんだなあ。

 

業界研究・企業研究

どうやれば良いのか、どれぐらいやれば充分なのかいまいち最後までわからなかった。

正直企業が自分に合うかどうかは説明会行けばだいたいわかるのでそんなにちゃんとやらんでもいいのでは?

とりあえず企業の業界順位、主力商品・サービス、新規事業ぐらいは調べてそれに合わせて志望動機をひねり出していた。

あとは[Vorkers]で年収、残業ぐらい。

決算情報とかはあまりみてない。大手志望なので売上1000億以上あるかだけ調べた。

 

OB訪問

結局1回もしなかった。やり方がわからない。どうやって連絡先知るんだ?大学の事務局では教えてくれなかったぞ?

大企業だと説明会の最後に座談会みたいな感じで若手社員と自由に話せる時間を設けてくれる。

そこで給料、残業、職場の雰囲気や具体的な仕事内容、その人の志望理由、面接での質問内容が何だったかまで何でも答えてくれるので、そこで遠慮せずにいろいろ聞けば充分かなと個人的には思う。

富○通の座談会は立食パーティー形式でジュース飲み放題寿司もケーキも食べ放題で、入社2年目から20年目までの好きな社員と話せるという超豪華仕様で感動した。

 

理系の友人たちは私と同じで全然OB訪問してないみたいだった。

逆に文系の友人は結構やってるし大事だって言ってる。ホントかなあ。

 

合同説明会

マイナビが幕張とか国際展示場でやってるアレ。詰まらなかった。

文理も学歴もバラバラな学生が来るし、時間も短いので企業も表面的な紹介しかしない。たいていの企業のホームページに新卒向けの分かりやすい事業紹介があるのでそっちの方が良い。

学内説明会はだいぶ参考になった。もちろん各会社主催の単独説明会も。

合同説明会に意義があるとすれば雰囲気を感じてヤル気が出ること。

あと、どうでもいいことまで律儀にメモとってる他の学生を見ると謎の優越感が生まれる。嫌な人間だ私は。

私は2社ブースを回っただけでうんざりしてさっさと退出してしまった。同じようにうんざりして出てきた学生とちょっとお喋りして一緒に露店でケバブとサワーを飲み食いして帰った。

 

インターン

夏と冬に1社ずつ行った。

行くのは1社ずつで十分だけど、ESや面接の練習としてもっと受けておけば良かった。

成功体験が自信になるし。

1週間以上あるインターンは確実に特別ルートに乗れる。

夏に2週間のインターン行って社員寮に住まわせてもらったけどWiFiがないし通信量も制限を超えていたのでスマホがろくすっぽ使えず完全に文明社会から隔絶された環境だった。良い経験にはなったけど寮では退屈だった。

 

ES添削

結構大事だったぽい。

学歴は悪くないし余裕だと思って雑なESを書いて出したら落ちまくったので慌てて添削してもらうことにした。

でも4月にもなって友人にダメダメESをみせるのがどうしても恥ずかしくてできなかったのでココナラというサービスで5000円払ってプロ(?)に添削してもらった。やってよかった。高いけど。

でも1回で充分。

 

模擬面接

1回ぐらいやっとけば良かったかもしれない。

自分の長所とか学生時代頑張ったことが本当に面接官に刺さるかどうか自信が持てなくて精神的にキツかった。こんな思いするぐらいなら模擬面接で練習して太鼓判を押してもらうべきだった。

 

ウェブテスト

友人同士で協力してやるのがほとんど。替え玉受験すら日常茶飯事。

人によっては問題をデータベースとしてまとめてて問題文の最初の5文字を打ち込んで検索するだけで答えが出てくるツールを持ってる人もいた。

私は特に対策はせず、1人でやってた。不正する勇気が無かった。

嫉妬で狂った友人に死なばもろとも精神で企業に不正をばらされる可能性だってゼロではないからね。

要するに私には完全に信頼できる親友がいなかったのだ……

ちなみに冬インターン行った企業に応募したらウェブテストで落ちてショックだった。

 

筆記試験

私は受けたことないですが、出版社は独特の筆記試験があるらしいですね。

新潮社筆記試験レポ - 東大生の読書記録

集英社定期採用 筆記試験レポ - 東大生の読書記録

楽しく読ませて頂きました。

絶対受からない自信がある。

 

グループディスカッション

どこで評価されてるのか全然わからない。

3回やって2回落ちた。

タイムキーパーとかいう役だけは絶対やらない。

発表役はみんなやりたがるのかと思ってたけど意外とやりたがる人が少なくて驚いた。

議論をひっくりかえす無能がいてイライラすることが多いとよく聞くけど、私はそう感じたことはない。みんな有能だった。

私が無能だったのか。イライラされてたのかな。

 

グループ面接

インターンの選考で1回やっただけでほとんど経験がない。

そのときはインターン30社受けてるという一橋大学の人と同じグループで、彼の話し方とか立ち居振る舞いをみることにした。

どんな凄い「学生時代頑張ったこと」を言うのかと思ったら大したことない経験を無理やり膨らまして話してる感じ。内容が薄くて安心した。嫌な人間だ私は。

私は家庭教師アルバイトのことを話した。落ちた。

 

個人面接

[One Career]で質問事項を予習して臨んだ。

基本的にめっちゃ和やか。そりゃそうだ。圧迫面接されたらこっちだってtwitterに書いて炎上させる時代。

ニコニコしてれば通る。本当に。

たどたどしい敬語使うぐらいならフランクにハキハキ話した方がいい気がする。「~なんですけど」とか言っても大丈夫だった。

1回「いやいや笑」と言ってしまってさすがにヤバいかと思ったけど受かってた。

 

成績証明書

作中だと最終面接までたどり着いたことの証拠として出てくるけど、そんなことはない。

1次面接の時点で提出が必要な企業の方が多い気がする。

世間的には企業は大学での成績なんて興味ないみたいに言われてるけど、大手メーカーの技術職はそうでもない。

「自分の成績についてどう思いますか?」とか「授業ではどんなことやったの?」とか聞かれる。理系だけなのかな?

下手に誤魔化しても仕方ないので何が苦手で何が得意か正直に言ったら通った。

 

内々定

非通知で電話が来ることもあるし、通知で来ることもある。

ここで「他社の選考もあるので少し考えさせてください」と言うと相手の態度が露骨に変わるので怖い。

そりゃそうだ。面接では第一志望って言ったのが嘘だったことになるから。

でもキープしたいなら言わないといけない。

これはこれで胃が痛いけど、まあそんな苦しみは無い内定の苦しみに比べれば何ともない。今度はこっちの立場が上なんじゃ。

 

 

めっちゃダラダラと聞かれてもいない自分語りをして満足しました。

ストレスのたまる就活が終わったんですからイキらずにはいられなかった。

 

そんな感じ。

 やっぱり私は性格が悪いのかもしれない。

 

 

おまけ

『何者』を読んで一番痛感したのは「何者にもならない小市民」というブログタイトルの痛さ。

「なれない」じゃなくて「ならない」というところが私の無駄な自尊心を表していますよね。

そもそも「何者にもならない」と「小市民」で若干意味が被ってる。

ブログをはじめたころの自分を張り倒したい。