何者にもならない小市民

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『11人いる!』 感想

 一人多いぞ

十一人いる!

 

11人いる! (小学館文庫)

11人いる! (小学館文庫)

 

 11人いる! 萩尾望都

 

とある縁あって手元に舞い込んできました。名作と言われる作品ですね。

萩尾望都は初めて読みました。

 

 

宇宙大学は銀河中の星々からエリートが集まる超難関大学。その入試は狭き門です。

筆記試験をクリアした受験者達を最後に待っていたのは10人一組で行われる実技試験。

 

主人公のフロル、タダらのグループに課せられた試験は漂流した宇宙船「白号」の中でアクシデントに対応しながら53日間全員が生き延びること。

 

初対面の10人が船内に入ってみると、いつのまにか11人いる!

これは手違いか?試練か?それとも別の意図を持った者が紛れ込んだのか?それは誰だ?

疑心暗鬼になりながらも、メンバーは協力して「白号」が無人漂流に至った経緯、船内の故障などを調べていく。

封印されていた大量の銃、栽培されている謎のツタ、故障と船内温度の上昇、タダの頭の中に流れてくる記憶、そして伝染病の記録……

 

そして遂に異常事態が……

 

 

そんな感じのストーリーです。

70年代に描かれた中編漫画ですが青春、冒険、謎解きの高揚感を今と何ら遜色なく表現しています。

 

 

最大の魅力はやっぱりフロルの存在です。

「オレ」という言葉遣いに似合わない中性的な顔と体格。勝ち気で直情的なくせに時々女の子らしい反応。

周囲のメンバーはフロルに振り回されつつ、なんだかんだフロルを中心に団結して互いの疑念を和らげていきます。そんなフロルの言動の1つ1つが読者を楽しませてくれます。ときどき可愛い顔をするのがずるいですね。

 

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中央左の髪の毛がふわふわななのがフロル

 

 

個人的に読んでて楽しかったのはメンバーが少しずつ警戒を解いて(本心では解いてないけれど)自分の星のことや身の上話をしていく場面。

バックボーンや価値観が全く異なる人間がそれを乗り越え、互いの星の文化を説明し合い興味を持ったり、これはどの星でも一緒だねと笑い合ったりしてシンパシーを感じていくシーンが良い感じです。

 

 

後半に収録されているのは「続・11人いる!東の地平・西の永遠」

こちらは宇宙大学入学後の事件を描いた中編。冒険色強めでこっちも面白かったです。

大長編ドラえもんを読んでいる時のようなドキドキ感。

 

 

良い体験でした。

 

 

そんな感じ。