何者にもならない小市民

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『藤子F不二雄異色短編集』1~4巻 感想

人間は変わるもんだぞ。きみも頼子も。

愛は色あせ情熱も冷え、暮らしの垢が重苦しくこびりついて、

やがて苦い目覚めの朝が…… 

 

ミノタウロスの皿 (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)

ミノタウロスの皿 (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)

 
気楽に殺ろうよ (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)

気楽に殺ろうよ (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)

 
箱舟はいっぱい (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)

箱舟はいっぱい (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)

 
パラレル同窓会 (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)

パラレル同窓会 (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)

 

 

 

前回に続いて藤子F不二雄の短編集です。

前回は少年SF短編集でしたが、こちらは異色短編集ということでかなり独特の世界観やチクリとした風刺、ゾッとする結末が描かれる短編が多かったです。

 

奇抜な世界観というのは私たちが「常識」として疑いなく従ってしまっていることに鋭い疑問を投げつけてきます。

「なぜ食欲はおおっぴらにするのに性欲は隠すべきなのか?」

「なぜ動物を殺して食べて良いのか?」

「正義を実行するとは何なのか?」

などなど。

そんな「常識」をとっぱらった世界に放り込まれ、しかもその世界が意外とうまく回っていたりすると、果たして今の私たちがとらわれているものは何なんだろう?と思ってきたりします。

 

まあ難しいことを考えなくても十分にこの短編集は楽しめると思います。理解できない世界観ではキャラクターが何を言い出すかやりだすかまったく想像できず、ドキドキぞわぞわしながらページをめくっていく感覚はたまらないですね。

 

 

1巻の『ミノタウロスの皿』は特に傑作揃いだったと思います。表題作の「ミノタウロスの皿」はもちろん「じじぬき」「わが子スーパーマン」「コロリころげた木の根っこ」など最後のコマに背中がヒュッと寒くなるような鋭い締めくくり方の作品が多かったです。

特に「わが子スーパーマン」の無邪気ゆえの残酷な正義の執行の仕方はおそろしい。

 

2巻は個人的にはそこまででもなかったですね。「ウルトラスーパーデラックスマン」はなかなかでしたが、それ以外は1巻の超豪華リストと比べると1枚落ちるかな……という感じ。まあそれでも割と面白いんですけど。

 

3巻は再び力を取り戻した傑作ぞろい。表題作「箱舟はいっぱい」の他にも「カンビュセスの籤」は人類の極限の選択を迫られる話はあまりにも胸が苦しいです。この話を読むためだけにこの巻を買う価値があると思います。

あのバカは荒野をめざす」では過去を変えて人生をやり直そうとする老いた主人公に

若い頃の自分自身が吐いたあまりにも若々しいまっすぐなセリフがかっこいい。

 

4巻はカメラシリーズ。未来から来たカメラのセールスマンがほぼ全話に登場し毎回不思議なカメラを主人公たちに売りつけようとしてきます。世界中の好きな場所を撮れるカメラ、音を再生できるカメラ、被写体の金銭的価値がわかるカメラ、寝ている人の夢を写すカメラなどなど。

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この怪しいセールスマンが結構ポンコツなのがかわいい。病気にかかったり散々値切られたりしては大抵ろくすっぽ儲けを出せずに未来に帰っていくことになります。でもたまにいいことしたり。

結構面白く読みました。

 

まあそんな感じ。

どれか1つだけ買うなら1巻か3巻がオススメです。

 

 

 

最後に収録作一覧を書いときます。

1巻『ミノタウロスの皿』

オヤジ・ロック

じじぬき

自分会議

間引き

3万3千平米

劇画・オバQ

ドジ田ドジ郎の幸運

T・Mは絶対に

ミノタウロスの皿

一千年後の再開

ヒョンヒョロ

わが子スーパーマン

コロリころげた木の根っこ

 

2巻『気楽に殺ろうよ』

ミラクルマン

大予言

老雄大いに語る

光陰

幸運児

やすらぎの館

定年退食

サンプルAとB

休日のガンマン

分岐点

換身

気楽に殺ろうよ

ウルトラスーパーデラックスマン

 

3巻『箱舟はいっぱい』

箱舟はいっぱい

権敷無妾付き

イヤなイヤなイヤなやつ

どことなくなんとなく

カンビュセスの籤

俺と俺と俺

ノスタル爺

タイムマシンを作ろう

タイムカメラ

あのバカは荒野をめざす

ミニチュア製造カメラ

クレオパトラだぞ

 

4巻『パラレル同窓会』

値ぶみカメラ

女には売るものがある

同録スチール

並平家の一日

夢カメラ

親子とりかえばや

懐古の客

パラレル同窓会

コラージュ・カメラ

かわい子くん

丑の刻禍冥羅

ある日

四海鏡

鉄人をひろったよ