何者にもならない小市民

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月曜日の友達 感想

--灰色の校舎 紺の制服 黒い頭ばかりのこのモノクロームの世界に、たったひとつ月野の瞳だけが炎のように激しく光をまき散らし色を灯している。--

 

『月曜日の友達』 阿部共実

 

月曜日の友達 1 (ビッグコミックス)

月曜日の友達 1 (ビッグコミックス)

 

 

 

阿部共実の最新作、買ってきました。

空が灰色だから』のハッピーエンドと鬱エンドどっちにころぶかわからないどきどき感にドはまりしてファンになってから全ての作品を買い集めようとしております。

 

主人公の水谷茜は運動と動物番組とUFOが好きな女の子。

そしてもう一人の主人公は学年一の変人と噂される月野透。色白で無口、スケバンの火木さんにいじめられてもとにかく無言。夜の街を徘徊しているとか下級生を強引に連れまわしているとか、はたまた奇天烈な自転車に乗っているとか、意味の分からない噂が数多くある人間で、茜も「月野と一緒にされたくない」と思います。

 

話は彼女が中学校に入学してしばらくのところから始まります。

きっかけはテレビの話題から。周囲が恋愛番組の話題で盛り上がるなか、そんなものより動物番組を毎週みている茜は話題についていけず、奇異の目で見られるように。その後もお洒落、カラオケと「中学生らしいこと」に関心が向く周囲の子とのズレに焦りを感じる茜は次第に学校が始まる月曜日にストレスを感じるようになってしまいます。

 

 

さらに優秀な姉と比較されたことでモヤモヤは最高潮に。思わず家を飛び出し、夜の学校に忍び込み気持ちを発散させようとします。

 

ところがそこには先客が。学年一の変人と噂の月野透が校庭にボールをしこたまぶちまけているのです。なにやってるんだ。

 

 

月野にまで変なやつという目で見られているのではと感じた茜は月野にモヤモヤをぶつけます。

 

「私ってそんなに変なのか!?女が体を動かしたいことは変なのか!卑劣行為を無視しないことは変なのか!姉妹に劣ることは変なのか!

私は何も変わっていない。むしろ変わったのは周りの方だ。中学生になると別世界だ。学校も家もみんな変わっていく。」

 

対して月野はこう茜を肯定します。

 

そんな小さな循環の世界の中の学校での評価なんてそこまで意味があるのかな。

かわいいとかバスケがうまいとか友達が多いとか調子がいいとかくらいで上下が決められるだろう。君はたまたまその枠にはまらなかっただけだよ。

別に変でもいいじゃないか。

 

この言葉に茜は救われた気持ちに。そして浮かんだ言葉がブログ冒頭の台詞。

阿部共実の作品に登場する人は詩的な表現がぽんぽん浮かぶんですね。この台詞に限らず感情と光景を美しく表現した言葉が多いのが阿部共実作品の魅力のひとつであります。

 

 

そして月野は毎週月曜の夜に校庭でこっそり会おうと提案します。恋の予感?と思いきや変人である月野が続けた言葉は「超能力の練習」!

恋とか運動とかで中学生らしさとは何なのかと悩んでいた茜をぶっちぎる小学生発言。さっき良いこと言ったと思ったらこれですよ。そりゃ茜の悩みもぶっとびますね。

以降月曜の夜だけ校庭で笑いあい、普段の学校では口もきかない不思議な関係が続くことになります。

 

 

そんなこんなで毎週超能力の練習につきあったりしているうちに親密になっていく2人。

夏休み前最後の月曜の夜、月野に対するいろんな感情をシンプルにまとめた茜の言葉がこの巻の一番のキュンキュンポイント。

 

私たち 友達になろう。

 

続く言葉もめちゃめちゃ可愛い。これは買って絵と一緒に読んでほしい。ほんとに読んでほしい。

 

 

 急激に大人びていく(ふりをしている)周囲になじめず、周囲を否定しようとして、でも本当は自分が変化しなければいけないんだとわかっていて、それでも変化したいと思えない。そんな葛藤すら周りから与えられた「純真キャラ」で覆い隠すしかない。そんな茜の姿には誰しも共感するところがあるのではないでしょうか。

 

そんな彼女が月野くんと会う時だけみせる無邪気な笑顔、そして意識せずとも月野くんと共に少しずつ成長する姿が本作の魅力です。

 

 

 

以降は本作品を読んだあとに読むことを推奨します。

 

 

全体的に甘酸っぱい感じで進んだ1巻でした。でもまあ阿部共実ですから、このまま幸せな関係が続くとは思えません。構図としては『ちーちゃんはちょっと足りない』と似ていますし。(『ブラックギャラクシー6』という例外もあるけど。)

不穏な伏線や台詞がちらほら……

・月野が超能力を求める理由は?結構大人な性格の彼がなぜここだけ幼い考えなんだろうか。

・「月野だけは大人にならないでくれ」、ここらへんの発言は結構闇が深い。

・月野のアルバイトの理由は? 他にも家庭環境の問題を匂わせる言葉が多い。

・「あの二人には、たくさん思い出を残してあげたいんだ」、凄く意味深。

・最後に燃やしている紙は?

・最後のページの月野をみた時の火木さんの妙に嬉しそうな顔。彼女、本当はいじめたいんじゃないですよね。あと取り巻きの男子が火木さんのところからいなくなって、寝たふりをしている姿はまさにいじめられっ子の象徴的ポーズ。彼女に何があったんでしょうか。

 

 

まあ気になる伏線の話を抜きにしても、そもそも2人のこんな歪な関係が続くはずがないですよね。親バレ、教師バレで強制的に終わるならまだ良いですが、そうはならないきがします。

成長していく過程でこの心地いい共依存関係は絶対にいつか自壊します。

そのときどうか壊れた関係を乗りこえる2人であってくれと願わずにはいられません。どうか救いのある展開を。

 

 第2巻をどきどきしながら待ちたいと思います。