りゅうおうのおしごと!1巻
そこに勇気や闘志やプライドが、怯えや震えや執念や意地や情熱や希望や絶望や根性がーー指した手に『想い』が込められているのならーー将棋は人を熱くする。どこまででも熱く。
何やら将棋を扱ったラノベがあるということで、たまにウォーズで将棋を指す身としては読むしかないじゃんね。
久しぶりにいわゆるガチガチのラノベを買いました。ラノベの定義にもよりますけど。表紙がアニメ絵の本を買うのは中学生の時に買った『とらドラ!』以来ですね。古典部シリーズをラノベに含めるなら話は変わりますが、まあそこらへんはどうでもいいやね。ラノベの定義論争は闇が深いので近寄らんとこ。
では感想を書きましょう。
--ししょうの玉・・・・・・すっごく固い・・・・・・--
いきなりエロシーン、と思いきや将棋のシーンだった。まあ将棋用語は叩くとか縛るとか突くとか玉が固いとかいろいろ怪しいフレーズが多いですよね。幼女の玉を縛りたい。
史上4人目の中学生棋士としてデビューし高校生で将棋界最大の栄誉の1つ「竜王」を獲得した九頭竜八一が主人公。竜王獲得までのサクセスストーリーかと思ってたら、話は獲得後11連敗を喫したところから始まるのが意外なところ。こういう工夫は好きです。
でまあ、なんやかんやあって八一に憧れて将棋を始めた小学生の女の子雛鶴あいを弟子にとります。そこからは将棋もそっちのけで幼女といちゃこら、というわけでもなかった。いや、いちゃこらはするんですけどそれ以上に将棋の魅力をアツく描いているのが良いところ。
対局シーンは具体的な指し手を記述する箇所は多くないので将棋初心者にもわかりやすく、それでいて、将棋を指しながらわくわくする気持ち、勝利に賭ける思い、絶対負けたくないという単純にして強烈な思い、負けに向けて気持ちを整理していく過程、将棋しかない、将棋で食っていくしかない自分が負けて全部を否定されたような悲しみ、焦燥感といった対局心理を良く表現しています。
幼女ラノベの皮をかぶった熱血将棋小説ですよこれは。すばらしい。
そして特筆すべきは将棋界ネタの豊富さ。昭和から最近まで将棋界には数々のエピソードがあるわけですがそれらを基にした小ネタが数えきれないほどこの小説には散りばめられています。
たとえば10ページ目のオシッコの件は米長邦雄永世棋聖の伝説の放尿未遂事件。13ページの「あーやっちゃったよー」、15ページの「勝率3割のクズ竜王」など将棋ファンならクスッとするネタがどんどん出てくる。
全部のネタをわかる人はそうそういないんじゃないでしょうか(私もわからない)。白鳥先生がどれだけ将棋を愛し、深く取材してきたかがよくあらわれています。
元ネタに関してはそのうち別記事で詳しく書きたいと思います。
(追記:書いた→
りゅうおうのおしごと!1巻元ネタ集 - 何者にもならない小市民 )
アニメ化も発表されたということで、続刊を読みながら楽しみにしています。
評価 8.0/10
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